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仙台高等裁判所 昭和39年(く)20号 決定

少年 O・RことK・S(昭一九・八・二〇生)

主文

原決定を取り消す。

本件を札幌家庭裁判所室蘭支部に移送する。

理由

抗告申立人K・Oの抗告趣意は、本件は少年の偽名の自供により無国籍者として審判を受け、保護者は審判に列席できず、意見を申し述べる機会を得なかつた、というのであり、少年本人の抗告趣意は、少年名義の抗告申立書記載のとおりであるから、これを引用する。

本件記録によると、少年の非行事実は、少年がC(少年)ほか二名と共謀して、昭和三九年四月二九日、東京都内の会社車庫から乗用自動車一台を窃取した、というのであるが、少年は原審判に際し、終始自己の名をO・Rといつわり、本籍も明確で両親兄妹が室蘭市に居住し健在であるのに、本籍は不明、両親、身寄りもない旨申し述べたため、原裁判所においても右供述どおりの扱いを余儀なくされ、前記Cが保護観察に付されて親元に引き取られたのに対し、少年は中等少年院送致の決定を受けたことが認められる。右によると、原決定は、少年が身分などいつわつたため、処分の著しい不当を招いたというべきであるから、本件抗告は理由あるに帰し、原決定は取り消しを免れない。そして本件は少年の本来の住居地であり、かつその両親の居住する室蘭市を管轄する札幌家庭裁判所室蘭支部に移送するのが適当と認められるから、少年法三三条二項少年審判規則五〇条を適用し主文のとおり決定する。

(裁判長裁判官 細野幸雄 裁判官 畠沢喜一 裁判官 寺島常久)

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